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CSR広告で発揮できる企業の競争力

2017年08月31日

CSRは社会的な要請にあくまで自主的に応えようという枠組みであり、義務ではない。そのため、法的な強制力もない。ただし、情報開示としての透明性が求められる。市民社会の影響力が強いヨーロッパでは、CSR上の問題からNGOによる不買運動が起こるリスクもある。企業のブランドイメージが悪化するような批判を受けたりもする。ブランドイメージを大切にしたい会社は、市民社会からの圧力を回避しようと積極的にCSRへ取り組み、情報開示をつづけている。市民社会の存在がCSR推進の原動力になっているのがヨーロッパであり、日本とは違った社会構造にある。グローバルな展開から、CSR活動そのものを輸入に頼って来た日本の企業は、形式的なCSRのスタイルを学んできたに過ぎない。しかしながら独自の発想で、世界に対してCSRの「新しい姿」を発信できる日本企業がいま求められている。

社会問題を解決するために、企業がどう社会に協力できるかという問いかけから出発したヨーロッパ型のCSRだが、同時に企業の競争力につながっているというプラスの認識が、ヨーロッパのCSR広告にある。例えば、成長をつづける観光ビジネスに対して、観光現場の改善もCSRで対処すべき問題のひとつだが、文化財保護に取り組むという要求に対応することで、結果として生産性が上がり、競争力が向上するということが広告を通じ起こり得る。企業はこうした活動をグローバルに展開できるので、世界的な文化財保護の環境改善に寄与するだけでなく、企業の国際競争力もイメージ戦略として強化されていく。CSRと競争力との間に連鎖が見えるこの新しい発想は、世界レベルで文化財を多く抱える日本だからこそ、いま取り組むべき内容でもある。

CSRを推進しながら企業としての競争力を高めるには、イノベーションが不可欠だ。動物愛護を目的に動物実験をなくすためには、研究方法を変えないといけないし、女性の働き方を変えるにも人事システムにイノベーションが求められる。あらゆる技術革新や組織の改革がCSRの出発点として、世界では起こっている。観光に欠かせないスマートフォン技術や自動車技術の最先端を走る日本企業だからこそ、その通信やシステム環境の先でCSRを学ぶところが大いにある筈だ。一歩前へ進み、自社の商品が置かれた社会が抱える課題を、企業が先回りをして学ぶことができれば、ブランドイメージの向上や成長性の強化に必ずつながり、社会とともに持続可能な会社を実現できるのだ。

一筆芳巳

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